豊田化工 株式会社


V字回復への歩み その1

はじめに

当社は2006年第一4半期、前年に引き続き毎月毎月1,500,000円の赤字に苦しんでいました。
これは売上対比5%の赤字に相当し、当時、銀行に言わせると、「このままでは先が無い」という苦境に立たされていました。
恥ずかしながら、以下データを基に公開させていただきます。当社の低コスト形成力の源です。

無駄の排除

資金繰り計画表
2006年から2010年までの資金繰り計画表を作成し、2010年までを見越した顧客別の入金予定・実績、新規顧客からの入金予定・実績、科目別の出金予定、実績を詰めながら、実際に製造工程に入ってみて無駄取りを行い続けました。これが以下全ての活動の原点です。

◆労務費
当社では伝統的に交代勤務者は24時間×360日、成形機が稼動していても、いなくても各直2名が勤務しておりました。
人間や会社には力学の第一法則慣性の法則が働いているようです。外力が加わらないと永久に変わりません。2006年6月頃からこれを改めました。
新しいやり方は、材料供給・梱包等に係る平日の交代勤務者を1直1名と半減させ、土日は8Hのみ交代勤務者を1名勤務させ、残りの二直は可能なものだけ無人生産にする事でした。
もちろん、交代勤務者に設備の無人モードの使い方や、ストッカーの循環モードの使い方の講習を充分にやってから実施しました。無人生産の前提は、チョコ停を起こさないようにしておく事です。これがなかなか厄介でした。無人生産は、真っ暗闇の中で成形機と周辺を稼動させますので、周辺機器のメンテナンスも事前に手を回しておきました。どうしてもストック容量に問題があるものが多く、土日は担当の交代勤務者を22:00から23:00まで梱包、材料供給に出勤させています。大きな製品はストック等に問題があり、停止します。
結果ですが、多少の予定外トラブル停止もありますが、無人生産したロットは安全なロットである事が分かりました。チョコ停後の異常処理等、人的な外乱が無いからです。
又、経済的には従来、月当たり1440Hかけていた交代勤務者を約600Hにしたのですから、交代勤務者の平均時給を1500円としても月当たり約1,200,000円以上の無駄がなくなったわけです。これで人材派遣もキャンセル出来ました。
尚、人材派遣以外の余った交代勤務メンバーは殆どインドネシアの若い研修・実習生でした。彼らの職種を変更し、段取り替えを教え込んでいったところ意外な事に日本人メンバーよりも優秀でしたので、日本人メンバーを淘汰し、現在では当社の製造工程はグループリーダーも含め、殆ど若い外国人です。この変更で、更に製造工程の労務費が下がり、余力で50代の幹部管理者要員を追加確保できました。
又、2006年5月以前は製造工程のことはまかせっきりで、私は全くといっていいほどタッチしていませんでした。不良現象の解析や対策・歯止めは製造工程のメンバーの資質で決まってしまっていた訳です。実は、この時点で成形・金型・不良解析の能力は、私自身が社内で最も高かったわけですがこの力を使っていませんでした。2006年6月から決意を決め、製造工程に積極的に係りました。その結果、従来の成形条件や監視機能の使い方がヘボかった事・金型の適正な修正を怠っていた事工程の製造標準が適切でなかった事等、未解決の問題がザクザク出てきました。その都度製造標準や金型を修正し、歯止めをかけ・・を2年間以上続けたわけです。当然自分自身の時間が不足しますので、土日を使ってつじつまを合わせました。850日間無休状態でした。もちろん労務費は発生しません。この生活が2年半続きましたが、2008年10月からは、それまで教え続けた製造メンバーに任せることが出来るようになり、そろそろ無休生活から卒業できそうです。

◆電力費→電力削減データ
2005年8月のデータでは、1%の稼働率当り3700Kwhを使っていました。この時点を基点として出来る削減を継続しました。現在の1%の稼働率当り電力量は2000〜2500Kwhで、削減率は32〜46%です。実現のために打った手は、稼働中/断食中看板の設置:成形機1台1台の集中掲示板に、表が青色の「稼働中」、裏が赤色の「断食中」看板を設置し、断食中の成形機には全く電力を与えない様にしました。従来はドライヤーも温調機も、油圧機のポンプモータも、又、下手をすると製品吸引用のブロアーもつけっぱなしでしたが、不稼働設備のシャットダウンはかなり効果がありました。特に油圧機のポンプモータは利いたようです。
電動機割合を上げる:油圧設備3台を売却して電動機設備に置き換えました。現在19台中、電動機はまだ8台ですが、明らかに統計数字は改善されております。
コンプレッサーにバッファータンクをつけ、一定圧力で休止するタイプに変更。:昨年6月に導入しましたが、まだまだ無駄エアーの使用がありすぎますので今のところ効果が出ておりません。次の無駄取りのターゲットです。

◆材料費
不良生産の低減:これは当たり前です。再生材処理費の削減:4年前までは産廃に出しておりました。処理料金は1立方7000円で、その頃は月当り200,000円支払って処理していました。3年前くらい前からタダで引き取ってくれる業者にお願いして処理量は激減しました。現在は、材料別にフレコンに保管し売却しておりますので、逆に売上が立ちます。

◆赤字製品の見直し
上記の活動をやりつくしても、ある程度の赤字製品が残りました。中には直接材料費が製品単価よりも大きいものもありましたがこれらは、弊社工場長経由で顧客折衝を行い、該当製品の赤字幅の圧縮に成功しました。

無駄の排除2

◆現在進行中なもの
無駄な生産を無くす:お恥ずかしい話ですが従来は段取り生産開始から終了のけじめが悪く、ひどいときは材料が無くなるまで生産を続けることもありました。1ヶ月前からですが、設備の集中掲示板に、計画ショット数・累計ショット数・管理者を明確にした表を掲示し、計画数で自動的に生産終了するようにしました。1ヶ月で既に在庫削減の効果が出て、資金繰りの強力な味方が出来たと思います。
金型余命管理のシステム化:これもお恥ずかしいことですが、従来の金型全バラシ清掃のタイミングは一部を除き勘ピュ−タ管理でした。これを樹脂別の余命一覧と累計生産ショット数の比較で、自動的に「あぶないよ 金型そろそろオーバーホールだよ」シートが出てくるようにしました。金型破損による無駄や、ガス焼け等の不良低減に「ムラ無く」効果が出てきつつあります。

◆今後予定しているもの
スクリューシリンダー余命管理
金型と同様、スクリューシリンダーは6ヶ月程度使うと、樹脂の焼けた炭化物や、以前の残存樹脂等が残り、不良の元になります。従来は異物が出始めたり、どうしようもなくなってから分解清掃しておりましたが、今後は先手を取って予定ショットでOHする方向で検討中です。尚、現在は1年で12〜24本程度分解清掃しておりますが、予防でなく対策でしかありません。金型の余命管理と同様にムラを無くすべくシステム化を狙っています。

◆現在
限界利益率:2006第一4半期に僅か20%だったものがその後安定して40%台を確保出来るようになりました。

データ〜試算表・電力削減〜